ASDoQ大会2014(2):講演2「ここがダメ!日本人技術者の文書力」
2014/10/17(金)に開催されたASDoQ大会2014の聴講内容を紹介します。 前回は、講演1「自動車分野・機能安全分野での文書要求と開発プロセスの対応」でした。今回は、講演2「ここがダメ!日本人技術者の文書力」です。
講演2「ここがダメ!日本人技術者の文書力」 ディン・ティエン・フゥン(FPTジャパン株式会社)
[1]オフショア開発(拠点:ベトナム)
・仕様書など翻訳が必要
・日本の顧客とのコミュニケーション(やりとり)数%の工数がかかる
[2]仕様理解がコミュニケーション工数増になっている
・コスト減の攻めどころ
・ブリッジSEの養成もやっているが、根本的に解決できない
・「意図が伝わらない書き方」「曖昧な回答」:どう進めるか分からない
[3]具体例1『要求仕様が曖昧』
・問題点
・顧客に問い合わせたところ...
・改善提案
現段階で「Mac/Linux将来検討」を考慮する必要がなければ、書かないように顧客と取り決めた。
[4]具体例2『仕様誤記』
・問題点
仕様書には「値引きの合計金額が0円かつ○○の場合、・・・」と記述されていたが、値引きした金額という解釈で正しいか不安であった。
・顧客に問い合わせたところ...
「値引き後の合計金額が0円かつ○○の場合、・・・」であることが判明。(値引きした金額では無かった)
・改善提案
業務内容を理解するためのトレーニングを行った。
[5]具体例3『誤解しやすい書き方』
・問題点
主語が「部門」なのか「担当者」なのか、解釈が分かれた。
・顧客に問い合わせたところ...
主語は、「部門」であった。
・改善提案
(1)分かりにくい用語を一覧表でまとめた
例:5以上/5以下/5未満
5>=A / 5<=A / 5<Aと記号で表記した
[6]具体例4『難しい言葉の使用』
・問題点
外国人に難しい言葉(方言や略語(社内用語))が仕様書に記述されていた。
方言:「いいんだべ。」
略語:「仕変」
・顧客に問い合わせたところ...
方言:「いいんだべ。」→「いいでしょう」の意味。
略語:「仕変」→「仕様変更」の意味。
・改善提案
社内用語で通じないことがあるので、一般的に使われている用語で表記する。
[7]具体例5『意図が伝わらない』
・問題点
「~決めさせて下さい」:顧客が決める/お互い相談で決める/自社で決めるの3つの解釈があった。
・顧客に問い合わせたところ...
「~決めさせて下さい」は、自社で決めても構いませんという意味であった。
・改善点
「自社で決めて下さい」とストレートに表現してもらうようにした。
[8]まとめ
- 伝えたいことをはっきり書く
- 結論を先に書く
- 短い文章で書く(50文字程度)
- できるだけ簡単な言葉で書く
- できるだけ文章の変わりに図で書く
所感
本発表の事例は、日本の顧客とベトナムの開発会社でのやりとりであるが、我々の開発現場でも同様のことが発生している。現案件でテスト部隊は詳細仕様書のレビューから参入しているが、レビュー指摘内容を見ると、[3]具体例1『要求仕様が曖昧』/[4]具体例2『仕様誤記』/[5]具体例3『誤解しやすい書き方』に類似したシチュエーションがあり、指摘事項として挙げて詳細仕様を開発者と共に改善しているところです。
また、[8]まとめの5項目にもあるように、書く技術のトレーニングが必要だと痛感し、現状のテスト仕様書が分かりやすく記述されているか見直してみようと思います。